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2022/02/26

国際会議の同時通訳デビューを振り返って・・・余談

 今月の頭に、ひょんなことから国際会議の同時通訳者としてデビューする機会をいただいた。これまで社内通訳者として企業の会議の同時通訳を経験することはあったものの、国際会議を経験したことはなかった。自分の今の通訳技術や経験からして、国際会議を経験するのはもっと先の将来になるかな、と思っていたのだけど、思いがけないオファーをいただき挑戦することにした。メールで最初にオファーを頂いた際には断ろうかと思っていたのだけど、私と一緒にオファーを受けた、以前一緒に通訳講座を受講したことのある仲間の通訳者の上妻つぐみさんが「やります!」と尻込みすることなく即返答したのに驚きつつ背中を押され、挑戦することにした。多分上妻さんのお返事が無かったら断っていた気がする。上妻さんは日頃から積極的で、日本会議通訳者協会(JACI)の英語セミナーの同時通訳にも挑戦するなど非常にバイタリティのある方で、彼女の意欲を見習わないとな・・・と改めてリスペクト。


実際の会議のあれこれについては、僭越ながらJACIに体験を寄稿しました。
国際会議の同時通訳デビューという、有難くも緊張感たっぷりだった機会を頂いたので、私からこのお仕事を受けるに至った経緯や学んだことをささやかながらお伝えしたいと思います。

まとまりがつかなくなるので記事には色々書かなかったことがあるのだけど、その一つとして改めて感じたことは、通訳は勉強が好きじゃない人には続けるのが難しいだろうな、ということ。
記事にも書いた通り、原発と放射能という理系分野にたじろいで勉強を始めるのが遅かったのだけど、本を読み進めていくうちに少しずつ書いてある内容が理解できる感覚が広がってきた。新しい知識が身につくときの高揚感が出てくるようになってからは楽しくなった。通訳者は案件ごとにこういうことをやらなければいけないし、本を読んで予備知識をつけるだけでなく、記載されている内容(専門用語)を本番当日は日本語と英語で表現できるようにならないといけないので、用語集の作成も同時に進めていく必要がある。日本語で読んでいて、「加圧水型原子炉」と書いてあれば、その内容をきちんと理解するためにネットで検索したり、YouTubeで動画を見たりするし、更にその言葉を辞書で引いて英訳を調べていかなければいけない。
私の場合は、幸い勉強は好きな方だと思うし(普段はサボりまくっているが)、英語という言語も好きなので辞書を引くのにも苦にならない。実際にはかなり地味で時間もかかる作業だから、これを楽しんでできる人じゃないと通訳という仕事はキツいだろうなと思う。でも、それが楽しんでできる人であれば、案件ごとに様々な分野の新しい知識を身につけていくこの仕事は、勉強をしてお金を貰える稀有で面白い仕事だと思う。案件が終わって学んだ知識を使う機会が無くなったとしても、その知識は無駄にならず、その後の人生を豊かにしてくれる。


大抵の場合、一つの説明だけでは素人には理解できないことが多いので、同じ内容を説明した別の資料を探したりする。

ある程度理解できたと感じたら、辞書を引いて訳語を探したり英語の資料も見てみる。

こうやって調べていくと、今度は「どうやって蒸気でタービンを回して、更に発電機が回るんだ!?」と気になることが無限に出てきてキリがない。時間が限られている中でどこまで調べるか、あるいは諦めるかを判断するのも結構難しい。

けど、今の時代はこうして簡単にYouTubeなどで映像資料が簡単に見つけられるのは本当にありがたい。ほんの15年ぐらい前までYouTubeなんてなかったから、それ以前に活動していた通訳者たちは本当にすごいなと思う。原子炉やタービンの仕組みなんて、絵と文章だけでは理解できなかった気がする。

あとは、JACIの記事にも書いているのでしつこく書くのは避けるけども、通訳を目指すきっかけになった関根マイクさんとチームを組んで一緒に仕事をさせていただいたことは自分の人生の中で一つの大きなマイルストーンになったと思う。
高校当時のインターンシップでは「得意な科目は英語しかないし、何か将来仕事をしたいとしたら、英語を道具の一つとして営業マンとかをやるのではなくて、英語で稼ぎたいな。だとしたら通訳かな?」と結構安直に考え、選択肢を無視してインターンシップの希望先に「通訳」と書いたところ、それを見た教員が私のためだけに地元のエージェントを探してくれた。それが今日に至っている。住まいや生活環境などが変われば、公私ともに人とのつながりも変わっていくのが人生というものだけれど、今でも変わらず付き合い続けてくださっていることに感謝。昨年は一緒にマラソンもさせてもらったし、今後もしつこく絡ませていただきます。

時間が経つのは本当にあっという間で、ふと、自分がこれだけの時間生きてきたことを信じられなくなることがある。「あれ、俺この前まで小学生じゃなかったっけ?」みたいな。一代目として農家を始めたり、起業して社会貢献したり、結婚して家庭を持ったり、歌って踊れるアイドル的バスガイドをやっていたり、営業からエンジニアにキャリアチェンジしてフリーランスとして成功したり、外資系監査法人で激務に追われながらも英語の勉強をしたりと、周囲の友人がそれぞれ着実に何かを実現したり、自己研鑽に励んでいる中で、多少なりとも彼らに負けないぐらいには、成果を出せているだろうか?

勝って兜の緒を締めよ、ではないけども(そもそも勝てたと言える結果ではなかったが)、今度は更に自信を持って国際会議に臨めるようにしたい。

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